中学時代のマドンナはマルチ商売のディストリビューター(勧誘員)になっていた

【前回のあらすじ】

中学時代のマドンナ篠田からの電話で呼び出され、ノコノコと出かけて行った私だったが、行った先の喫茶店でスーツ姿の見知らぬ男が加わるという不穏な流れになった。

 

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篠田の横に座った男は名刺を出して来た。

仮に「羽賀研二」 としておく。

篠田はその羽賀を自分の先輩だか上司だかと紹介した。

羽賀なる男も篠田とは阿吽の呼吸で会話に入ってくる。

 

 

いやいや、先輩とか上司とか言われても私にはワケが分らん。

私が呆気にとられていると羽賀は、

「エリトさんは、篠田君のお友達で信頼できる方とお聞きしています。なので、特別に素晴らしい世界への招待状を御用意して来たんですよ」

こんな感じのことを言って来た。*1

なぜか「素晴らしい世界への招待状」というフレーズだけはハッキリと憶えている。

あまりに胡散臭いセリフと思ったからだ。

 

目の前に広げられたパンフレットにはピラミッドの図が描かれており、各階層には人の顔が描かれている。

ちょうどこんな感じ ↓ ↓ ↓ 

 

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実際の図にはワケのわからない単語や数字が書いてあったのだが、それがマルチの収益構造を説明している図だってことはスグにわかった。

 

瞬間、私は全てを理解した。

篠田はマルチの勧誘員なのだ。

私に会いたいと言って来たのは中学時代の懐かしさからではなく、マルチに勧誘するためだったのだ。

 

私の心の中には、怒りと哀しみと情けなさの入り混じった複雑な感情が湧きあがった。

その時の私は能面のように無表情になっていたと思う。

人間は一度にいろいろな感情が湧くと無表情になるのだ。

 

舐めやがって・・・このドブネズミどもが!

私の中にドス黒い霧が湧いてきた。

篠田は私の純情を弄(もてあそ)びやがった!

自分の銭儲けのために私を子ネズミにしようと考えたのだ。

そして、それにまんまと引っ掛かった能足りんが自分だと思うと何とも言えない侘(わび)しい気持ちになった。

 

篠田は考えたに違いない、

「中学時代に居たエリトとかいうガリ勉野郎なら、ちょっと粉をかければイチコロだろう」

「勉強しか能がない世間知らずのアイツなら、女っ気をチラつかせればすぐに転ぶよね」*2

「電話したら見栄はって忙しぶっちゃってさ、バッカじゃないのwww」

「スーツにネクタイ*3なんかハメてカッコつけてバッカみたい。わたしとハメれる*4とでも思っちゃってんのかしらw キモいんですけどお~」

私の頭の中に篠田の嘲笑う声がコダマした。

 

黙りこくって無表情な私をなんとか自分たちのペースに乗せようと篠田と羽賀がアレコレくっちゃべるのだが、一言も私の耳には入らない。

 

私が無言のまま席を立って帰ろうとしたら、羽賀が私の左腕をつかんできた。

「まあまあ、エリトさん、われわれの話を聴いてくださいよ~」

そう言った羽賀の表情からは、明らかに私を下に見て舐めていることが伝わってきた。

そもそも初対面の人間の身体を気安く触るなんて無礼も甚だしい!

 

私は羽賀の眼を睨んで「触るな!」とだけ言った。

やや怒気を込めて言ったら、奴はちょっと意外な風で手を離した。

篠田は知らんふりで顔をそむけている。

「わたし、知~らない」といった感じ。

 

このパンスケが!

オマエが高校中退したのはDQNのガキを孕(はら)んだからって知ってんだからな!

 

東京でグラビアの仕事やってただと?

ウソつけ!

オマエがやってたのはエロ雑誌の処女当てクイズだろうが!

借金に困ってフー族やってたのも地元じゃバレバレなんだぞ。

いい加減にしろ!

 

帰り道、私の中でもう一人の自分が荒れ狂っていた。

と同時に、情けない気持ちがいっぱいあふれてきて、薄っすら涙も滲(にじ)んできた。

 

おわり。

 

※もうかなり昔のことなので心の傷も癒えたかと思ったんだが、イザ記事にするために思い返すと当時の生々しい感情がよみがえって来て興奮気味になってしまった。

後で冷静になったら、ちゃんと推敲してからアップしよう。

原文のままでは掲載できそうもないから・・・。

 

 

 

*1:顔は笑っていたが目は笑っていないという典型的な詐欺師の笑顔だった。

*2:実際、マルチの勧誘では美人をエサにして引っ掛ける方法が使われる。対女性ならホスト風のイケメンが出て来るらしい。

*3:その日は精一杯の一張羅で出かけた。

*4:聞いた話では枕勧誘をする女ネズミもいるらしい。