2浪が決まった春に偶然バッタリ再会した中学時代のバカは一流大学生になっていた

今でも忘れられないことがある。

1浪の末に受験した大学がことごとく不合格で2浪が確定し、傷心で繁華街をぶらついていた時のことだ。

とある本屋で大学受験参考書コーナーにいた時、不意に後ろから声をかけられた。

「襟人(実際には私の名字を呼ばれた)じゃないか?」

 

ビックリして振り返ると、そこには中学で同級生だった北村(仮名)という奴がいた。

北村と私は同じ学習塾に通っていて、私が特選クラスで北村は進学クラス。

その学習塾は偏差値別のクラス編成をとっていて、上から特選クラス、特進クラス、進学クラスの3ランクに分かれていた。

特選というのは「特別選抜」の略で、その塾の中でもトップクラスの人間だけが選ばれて組まれたクラスで、その下の特進クラスというのが「特別進学」でまあまあ優秀、そして最後の進学クラスが普通の高校受験コースである。

 

中学生の頃の私は、北村のことを下に見ていた。

特進クラスであればまだしも、普通の進学クラス*1にいた人間など私にとって眼中になかった。

 

そんな北村に、2浪が確定して弱っていた自分を晒すのは嫌だったが、コチラは医学部志望なのだ。

2浪ぐらいは十分許容範囲だろうし、そもそも北村は大学にすら行ってるかどうか怪しいのだ。

 

私は気を取り直して毅然と振る舞った。

「よお、北村か。偶然だなあ。」

 

それに返って来た北村のセリフに驚いた。

「ひさしぶりだな~。俺、今、K大の法学部に行ってるんだ。襟人はどこ大なん?」

 

は? K大の法学部?

私は自分の耳を疑った。

K大学というのは国立の一流大学じゃないか。

バカの北村が、なぜそんな難関大学に・・・。

しかも奴は「今、K大の法学部に行ってる」と言ったのだ。

その表現だと、その春に入学するという事ではなく既に大学生ということだ。

ということは、奴は去年現役でK大に通ったということか。

 

 

信じられないといった表情の私を見て奴が言った。

「高校に入ってからは真面目に勉強したんよー。笑」

屈託のない笑顔で言いやがった。

 

私は必死に動揺した心を立て直しつつ(自分が2浪確定であることを)誤魔化そうとした。

「ああ、そう、うん、スゴイじゃん。俺はいろいろあってさあ・・・」

 

私のキョドった態度と大学受験の参考書コーナーに立っていたことから察しがついたのだろう。

「襟人のことだから医学部とか狙ってるん?」

北村は助け舟のような物言いをしてくれた。

 

そんな優しい北村に対して、私はとっさに虚勢を張った。

「ああ、一応、理3*2なんだけど、なかなかねえ・・・」

なにが「なかなかねえ」だ。

自分のことながら情けなくなる。

当時の私の学力では国立の医学部はおろか、歯学部でさえ手が届かない状態だったというのに・・・。

 

北村とわかれた後の帰り道、私は虚しさと自己嫌悪でいっぱいだった。

高校の3年間で受験地図はガラッと変わったのだ。

中学時代はバカにしていた北村が、高校の3年間で私を追い越していたという現実に私はKOされていた。

 

時間の経過は、時として残酷な現実を創りだす。

泣きたくなる気持ちを抑えながら、私はトボトボと家路へついた。

*1:特選と特進クラスには選抜テストがあったが、進学クラスは誰でも無条件で入れた。

*2:読みは【りさん】。東京大学医学部の俗称。大学受験の最高峰にして最難関。