月収5万の私の楽しみは、人のいないマックで空想に耽る事

私は週に3日ほど、隣町にある学習塾でアルバイト講師をしている。

時給は1100円で1コマ90分授業を日に2コマから3コマを担当している。

月の収入は約5万円。

テスト週間にはコマ数が増えるが、それでも月に10万円にも届かない。

これが40歳を超えた大の男の実入りとは我ながら情けなくもある。

 

しかし、特に道楽を持たない自分としては、家賃や食費の要らない実家住まいであることを勘案するとこの額でも十分だ。

 

そんな私の楽しみはマックに行ってダブルチーズバーガーセットにフィレオフィッシュを単品で付けて、それを食べながら空想に耽ること。

 

 

ただ、場所と時間帯にだけは注意している。

 

場所は私の生活圏やアルバイト先の塾とは離れた地域の店に行く。

知り合いや教え子と会いたくないからだ。

 

時間帯も中高生の下校時間は外している。

10代の彼・彼女らが無邪気に青春を楽しんでいる光景を見るのはツライ。

私のような人生の敗北者にとって、可能性のある未来が待っている10代の若さはあまりに眩しすぎて耐えられないのだ。

 

なので、必然的に時間帯は昼の2時や3時だったり、24hの店であれば深夜となる。

 

昼下がりや深夜の時間帯*1には客がいなくて店内がガラーンと静かになっているが、私にはそれが合っている。

 

窓辺の席*2に座って、ハンバーガーやポテトを食べながら自分が中学生・高校生に戻ったかの如く空想の世界に入る。

 

高校では落ちこぼれてしまった私だったが、空想の世界での私は学年でもトップクラスの成績で、定期試験では毎回赤太字で貼りだされている。

 

赤太字というのは母校の習わしで、定期テストの成績優秀者30位までを職員室の横にある掲示板に貼りだすのだが、トップ3位の名前を赤い太い字で書かれることから「赤太字」と呼ばれていた。

同様に4位から10位までは普通の太字、11位から20位までが中字、21位から30位が細字だった。

 

高校は一学年が約300人だったから、名前が貼り出されるということは上位の10%に入っているということだし、更にいえば、赤太字ということは学年の上位1%ということだ。

 

私は高校生活3年間で1度も名前が貼り出されたことがなく、いつも名前が貼り出されている連中のことを嫉妬と羨望の入り混じった気持ちで眺めていた。

それが空想の中では、私が羨望の的になり嫉妬される立場なのだ。

 

授業中は先生の話などそっちのけで、頬杖をついて片手でシャーペンをクルクル回しながら「大学への数学」の学コンの問題を考えたりしている。

時折、先生がそんな私をとがめて意地の悪い質問をしてくるのだが、私はいとも簡単に正解を答えてしまう。

周囲はそんな私に一目置いて仰ぎ見てくる。

「襟人は次元が違うからなあ」などと半ば呆れ顔。

 

クラスの女子は私の頭脳の明晰さと論理的でエレガントな解法*3に畏敬の念をもって注視する。

もちろん、その中には白石もいる。

彼女も私のことを尊敬と羨望の眼差しで見つめているのだが、私はそんなことは気にもかけてない風で淡々とした態度をしている。

 

そんな空想なら3時間でも4時間でも平気で続けていられるのだが、夕方近くになって窓から下校の中高生たちの姿が見え始めたら、そそくさと席を立つ。

 

所詮私の青春は空想の中だけの偽物で、本物の彼らには敵わないからだ。

出来ることならもう一度、人生をやり直したい。

 

*1:昼下がりや深夜は基本的に客はいないのだが、たまにウェ~イ系の大学生集団とバッティングするのが苦痛。そういう時には持ち帰りにして人っ気のない公園に行く。

*2:窓辺に座るのは外の風景を目で楽しむ為ではなく、記事末部にあるように下校時の中高生たちの姿が見え始めたら店を出る為である。

*3:「エレガントな解法」というのは数学の難問題を鮮やかに解くことを指す。私の時代に流行った一種の受験スラングである。他にも「腕力で解く」などがある。