私が神聖な存在と信じていた彼女はただの安っぽい女だった

私の通っていた高校では、毎年春になると新3年生だけが早めの修学旅行に行く。

私の学年は京都と大阪で一泊づつ滞在したのだが、ただ疲れただけで全くおもしろくもなかったし、思い出らしいものも残っていない。

今の時代は修学旅行も生徒の希望を聞き入れて行うようだが、私の頃は生徒のことなどどうでもよく、ただただ行事の一つを消化するという儀礼的なものだった。

 

話が逸れてしまった。

元に戻そう。

 

事の起こりは旅館での夜だった。

 

修学旅行の夜は、消灯後に男子生徒たちが一つの部屋に集まって男子どうしでのクダラナイ「会議」が開かれた。

会議の内容は下世話なことばかりで、誰と誰がつきあっているとか誰それがどこまで経験したとか、そういうことだった。

私はそんなことには興味がなく、横になってうつらうつらと半分寝入っていたのだが、「白石」という名前が出た途端に眼が覚めて耳を澄ませた。

 

座の中心になっていた情報屋みたいな男子生徒が言うには、白石は他校の男子生徒とつきあっているというのだ。

しかも、その他校というのがH学園というではないか。

 

H学園というのは隣県にある私立の六年一貫校で、東大や国立大の医学部に何人もの合格者を出す名門校だ。

中学生の頃は塾の特選クラスに籍を置き、学年でも首位を守っていた私でさえ手が届かなかったレベルの進学校なのだ。

白石は本当にそのH学園の生徒とつきあっているのか?

 

 

私が聞き耳を立てていると他の男子生徒からも白石に関する「情報」がチラリホラリと出始めた。

どうやら何も知らなかったのは私だけで、男子連中は目ぼしい女子生徒に関しては驚くほど通じていた。

 

その晩の会議で(白石に関して)わかった事は次のようなことだった。

  • 白石は1年生の夏休み頃からH学園の生徒とつきあっていたこと
  • その男子生徒とは白石がH学園の文化祭に行った際に知り合ったらしいこと
  • その男子生徒は1学年上で(つまりその年の卒業生)で、春からは国立大の医学部へ進学が決まっていること
  • たびたび白石とその男子がデートしているのをクラスメートが目撃していたこと

 

ショックだった。

彼女が男子とつきあっていたという事もさることながら、それがH学園の生徒だとは。

しかも彼女の方がH学園の文化祭に遊びに行って、そこの男子生徒と仲良くなったことが信じられなかった。

彼女はそんな軽薄な女だったのか。

 

私の中に何とも表現の仕様の無いドス黒く捻じれた感情が湧き上がって来た。

彼女は他校の男子とつきあっていて、しかもそれは私が到底かなわない男なのだ。

 

私の心は著しく傷ついた。

裏切られた気持ちでいっぱいだった。

 

彼女は神聖な存在でもなんでもない、どこにでも居るただの安っぽい女に過ぎなかったのだ。